外国税額控除とは何かをわかりやすく解説!外国税額控除を利用した節税策についても紹介

皆さんは「外国税額控除」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?

海外で不動産を売却された方は、もしかすると確定申告の際に税理士から説明を受けたことがあるかもしれません。

外国税額控除は、非常に複雑な制度でありますが、海外の税務面の隙をついた節税になります。

個人の所得税や住民税、はたまた不動産を売却した際の譲渡税も日本税法上に則り、損益通算をすることができるトリックを持ちます。

しかし、一般に生活をする上では全く利用することがなく、実は税理士でも外国税額控除について理解が深い人はあまり多くなく、複数の税理士に同じ質問をしても返ってくる返答はそれぞれバラバラであるということもよくあります。

そこで今回は、実際に外国税額控除を利用したことがある不動産投資の専門家である筆者が外国税額控除仕組み、海外との税法の隙をついた節税スキームについてわかりやすく解説します。

外国税額控除制度ってなに?

そもそも外国税額控除制度とは、どのような制度なのでしょうか?

インターネットで外国税額控除とは何かをリサーチしても税理士が書いた難しい言い回しの内容や証券会社が英語を和訳したものなど、何が書いてあるか全くわからない記事が多いです。

結局、外国税額控除とは何かよく理解できません。

筆者は実際に外国税額控除を利用したことがあり、経験に基づいて外国税額控除の仕組み、海外との税法の隙をついた節税スキームについて解説したいと思います。

外国税額控除とは、例えばアメリカで支払った税金や源泉徴収額は日米租税条約に基づき、日本では控除され二重課税にならない仕組みのことを指しています。

そのため、例えばハワイの不動産を売却した場合は、FIRPTA(外国人投資家源泉)とHARPTA(ハワイ非居住者源泉)という2つの源泉徴収があり、日本に住む日本人がハワイ現地の不動産を売却すると売買価格の22.25%(FIRPTA 15% / HARPTA 7.25%)が税務署にて留保されます。

これはアメリカの税務署が譲渡税の取りこぼしを防ぐためにあります。

日本に住む日本人がハワイの不動産を売却して、譲渡税の支払いが必要な場合、法律によって予め税務署にて一定額を留保しなければ、日本まで追いかけ、譲渡税の支払いを催促することが現実的に難しいからです。

そのため、基本的に22.25%は売買時に税務署にて留保されますが、翌年のアメリカでの確定申告時に譲渡税を計算し、22.25%の金額が払いすぎてしまっているようなら、多く支払っている分の還付申請を行うことができます。

日本人の場合は、物件の所在地であるハワイが税金を納める第一納税地になりますが、最終的には日本税法に従い、日本にて納税をすることになります

ハワイの不動産を売却しても日本は全世界課税であるため、ハワイの不動産の売却で得た利益に対しても確定申告を行い、所得を告知する必要があります。

日本の譲渡税の計算は所有期間が5年以内であれば39.63%(短期譲渡)、5年超(長期譲渡)であれば20.315%になり、これは売買価格に対しての課税ではなく、譲渡益に対してかかる税金となります。

例えば、3,000万円で購入した物件を5,000万円で売却できた場合、売買価格の5,000万円に対して譲渡税が課税されるのではなく、5,000万円-3,000万円の差額の2,000万円に対して課税されることになります。

そのため、短期譲渡であっても税金は約800万円、長期譲渡であれば約400万円になります。

一方、ハワイの不動産を売却した際の源泉徴収であるFIRPTAとHARPTAは売買価格の22.15%になりますので、5,000万円で売却した場合は、1,000万円超が売買時に税務署にて留保される金額になります。

この譲渡益に対しての課税と、売買価格に対しての課税は大きく金額が異なり、当然ながら売買価格に対する課税の方が金額は大きくなるため、一般的に日本人がハワイ不動産を売却した場合は、日本税法上の譲渡税よりもハワイで支払いが必要な源泉徴収額(FIRPTAとHARPTA)の方が金額は大きくなります。

ドルで計算すると話がややこしくなりますので、ここでは円計算で説明しますが、先ほどの3,000万円で購入したハワイ不動産を5,000万円で売却した場合を例に、外国税額控除について説明します。

5,000万円で売却しておりますので、源泉徴収額は5,000万円×22.25%=1,112.5万円になります。

これがハワイ州に留保されますので、日米租税条約に基づき、1,112.5万円が外国税額控除になるため、日本では譲渡税の支払いが発生せず、上記で説明したように日本で納税する譲渡税よりも源泉徴収額の方が大きいため、多めに払いすぎている源泉徴収額については還付されると考える税理士やハワイの不動産会社が多いのですが、それは違います。

実は外国税額控除の計算は単純にハワイで支払った源泉徴収額がそのまま適用されるのではなく、日本とアメリカ、若しくはその他の国で収入がある場合は、それら全世界の収入を合算した金額の収入割合によって適用額が変わってくるのです。

外国税額控除の基本的な計算方法

それでは外国税額控除の計算方法はどのような式になるのでしょうか。

実は単純に日本の所得とアメリカの所得とを足し合わせるのではなく、日本の分離課税を一つずつ計算する必要があります。

サラリーマンの人は収入というと給与所得が思い浮かぶと思いますが、実は個人の場合の税区分は以下の10個に分けられます。

外国税額控除計算式

  • 外国税額控除=海外所得÷全世界所得×100

この計算式を見れば分かるように、外国税額控除は海外所得の大きさが重要なのです。

そのため、先ほどの例のように3,000万円で購入したハワイ不動産を5,000万円で売却した場合は2,000万円が海外所得に入ることになりますが、例えば年収500万円のサラリーマンが上記の不動産を売却した場合、2,000万円(海外所得)÷2,500万円(全世界所得)×100=80%になりますので、ハワイの税務署に納付する売買価格の22.25%の源泉徴収税(FIRPTA / HARPTA)の合計1,112.5万円の80%が日本の税金から控除できるということになります。

一方、海外での不動産譲渡以外の所得などがなく、日本の所得が1億円の富裕層であれば、全世界所得が膨れ上がり、外国税額控除は16.6%しか利用できないため、アメリカで1,112.5万円の源泉徴収額を支払っていても185万円ほどしか外国税額控除を使うことができません。

逆に、アメリカ株の配当収入や不動産賃貸収入があり、日本の所得以上に海外での所得が多ければ外国税額控除を100%に近い水準まで利用できるため、節税効果が高いと言えます。

しかし、日本での収入よりもアメリカを含めた海外所得の方が多いという人は日本人では極々僅かだと思います。

実はこれも海外の築年数の古い物件を用いた節税を行えば現実的に日本の所得を圧縮することができます。

特にアメリカの不動産は、日本税法上で定められた耐用年数を超過していれば短期間で減価償却費を多額計上することができます。

木造不動産は22年超であれば4年、鉄筋コンクリート造のホテルは39年超であれば7年、マンションは47年超であれば9年となります。

また、アメリカ不動産は土地評価よりも建物の価値の方が高い物件が多く、90%が建物の評価と税務署の評価によって定められている物件もあります。

土地は経年劣化をしまませんので減価償却の対象からは外れ、建物部分のみ減価償却費を計上できますので、建物評価は非常に重要なポイントになります。

これも例を挙げて説明しましょう。

例えば5,000万円の売買価格で建物評価が90%、築年数47年超の区分マンションを購入すると5,000万円(購入価格)×90%(建物評価)÷7年間(法定耐用年数)の計算式のもと、年間500万円のペーパーロスとなります。

そのため、自分の給与所得に応じて、同じような不動産をいくつか保有していれば日本での所得をゼロにすることができる上、日本国内にとどまらず、海外の不動産にも投資を行えば海外不動産の売買を行うごとに外国税額控除を利用した節税効果が増すことになります。

少し話が脱線しましたが、それでは日本にて1億円の所得がある富裕層は185万円しか外国税額控除を利用できないと説明しましたが、残す外国税額控除は利用できずに終わってしまうのでしょうか。

実はこの外国税額控除、3年間キャリーオーバーすることができますので、翌年以降に持ち越すことができます。

但し、外国税額控除を利用する上で規制があります。

それはキャリーオーバー期間中に日本以外の海外所得があるということです。

先ほどの外国税額控除の計算式の通り、外国税額控除を利用する際の計算式は、「海外所得÷全世界所得×100」ですので、海外所得が0だと外国税額控除が利用できる金額も0になります。

そのため、海外所得がなければ185万円しか初年度に外国税額控除を利用していなくても源泉徴収額(1,112.5万円)から初年度に利用した外国税額控除(185万円)を引いた、残す1,000万円弱の外国税額控除は利用することができないのです。

一方、日本での所得を減らし、海外所得を増やす方法として紹介した築年数の古い海外不動産を用いた投資を利用すれば、毎年海外の不動産賃料収入が発生しますが、日本での所得は圧縮されますので、外国税額控除は3年間フルに利用することができます。

また、外国税額控除には他に大きなメリットがもう一つあります。

この外国税額控除は所得税や住民税、不動産を売却した際に利益がでる不動産譲渡税など、どのような所得区分であっても損益通算をすることができます。

個人の場合、税区分が10個に分けられると話しましたが、株式所得や不動産所得は分離課税になりますので、株式の売買に伴う利益や所有する投資用不動産の所得はそれぞれの税率に則って所得税を計算する必要があります。

株で得た利益に対する所得税は20%、不動産であれば短期譲渡は39.63%、長期譲渡であれば20.315%と異なり、給与所得の税率よりも高い場合があります。

この外国税額控除を利用すれば、それらの分離課税とも損益通算をすることができるのです。

そのため、所有期間が5年以下の短期譲渡の税率39.63%と高い税率を支払う必要がある場合でもこの外国税額控除を利用すれば、この不動産譲渡税とも損益通算ができますので、高く売却できる見通しがたっていれば長期譲渡を待たずとも売却しても良いという判断ができます。

現在の法律では分離課税などの所得区分に関係なく損益通算できる税法はほぼなく、この外国税額控除は海外との税法の隙をついた節税策と言え、海外不動産の減価償却と併用して利用すれば絶大な節税効果を見込めます。

但し、一点注意が必要で、それは3年間のキャリーオーバー期間が満了し、まだ外国税額控除が余ってしまっている場合です。

この場合は、実際のキャッシュは動いていないものの雑所得として申告する必要があり、最高税率の富裕層であれば55%の税率が課せられます。

そのため、外国税額控除はできるだけ3年以内に使い切ることが非常に重要になってきます。

尚、売却時に留保される源泉徴収額は翌年4月15日までのアメリカでの確定申告で譲渡税が確定すると多めに納めすぎた源泉徴収額は還付を受けることができます。

アメリカの譲渡税は日本と異なり所有期間に伴う短期譲渡や長期譲渡の税率などで区分されておらず、一律27.5%(2019年現在)となりますので、通常は多額還付を受けられることが多いと考えられます。

アメリカ不動産を売却した場合の流れ

文字だけですと、なかなか外国税額控除を利用した節税手法のスキームを理解しづらいと思いますので、時系列的に箇条書きでも説明していきます。

大まかな流れは以下の通りです。

  1. アメリカの不動産を売却する
  2. 引渡し時にアメリカにて規定の源泉徴収額を支払う
  3. 売却の翌年の3月15日までに日本でアメリカの不動産売却に伴う確定申告を行う、外国税額控除を利用し所得 との損益通算を行う
  4. 売却の翌年の4月15日までにアメリカにてアメリカ不動産売却に伴う確定申告を行う
  5. アメリカの申告時にアメリカの譲渡税を納税し、余剰分の源泉徴収額の還付申請を行う
  6. 外国税額控除に余剰金が出た場合、3年間はキャリーオーバーされるので翌年も外国税額控除を利用する
    ※外国税額控除を利用するには海外所得が必要です。
  7. 3年間のキャリーオーバー期間が満了し、外国税額控除が余ってしまっている場合は雑所得に計上する

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