「フラット35」とは、マイホームの購入を促進させるために、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供している最長35年の全期間固定金利住宅ローンのことです。
固定金利のため、資金を受け取る時に、返済終了までの借入金利と返済額が確定するメリットがあります。
しかし、2019年5月に国の補助金が使われるフラット35をマンション投資に悪用する不正利用が横行している問題が発覚しました。
フラット35は持ち家の取得を促進を目的とした住宅ローンのため自ら居住せずに賃貸に回す投資目的の利用は契約違反です。
2018年9月に「不正に利用されている」という外部からの情報提供があって以降、2019年5月に113件、さらに8月に別途49件の不正利用の疑いが明らかになりました。
合計すると不正の疑いがあるのは162件にも及びました。
明らかになった不正利用の内容は、大きくは本来あってはならない投資目的での利用と、申込み時の住宅価格を不正に水増しして、多額の融資を受けるという2点で、その両方ともに行ったケースが大半を占めていました。
そこで今回は、フラット35について、金利の種類や審査、不正利用、注意点に至るまでわかりやすく解説します。
「フラット35」の意味とは?
フラット35
意味:持ち家の購入を促進させるために、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供している最長35年の全期間固定金利住宅ローンのこと。
フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して実施されている住宅ローンののことです。
下記の図にように、最長35年の全期間固定金利型で、完済までの金利が確定、返済額が変わらないので安心して利用できます。
返済中に市場金利が上昇し、その時点のフラット35の借入金利が上昇した場合でも、資金受取時に確定した借入金利で返済を継続することができることもメリットがあります。
しかし、裏を返せば、ローン返済中に市場金利が低下し、その時点のフラット35の借入金利が低下した場合でも、資金受取時に確定した借入金利で返済が続くことになります。
それでも現状は、金利水準も全期間固定金利型としては低い水準に抑えられているため、月間で約1万人の利用者がいる人気商品になっています。
固定金利 | 変動金利 | ||
全期間固定金利型 | 変動金利型 | 固定金利期間選択型 | |
特徴 | 借入時に返済終了までの借入金利が確定するタイプ![]() |
金融情勢の変化に伴い、返済の途中でも借入金利が変動するタイプ![]() |
「当初5年間0.5%」など一定期間、固定金利が適用されるタイプ![]() |
メリット | 借入時に借入期間全体の返済額が確定できる。 借入後に市場金利が上昇しても返済額は増加しない。 |
借入後に市場金利が低下すると返済額が減少する。 | 固定金利期間中は返済額が確定できる。 固定金利期間終了後に市場金利が低下すると返済額が減少する。 |
デメリット | 借入後に市場金利が低下しても返済額は減少しない。 | 借入後に市場金利が上昇すると返済額が増加する。 借入時に将来の返済額が確定しないので返済計画が立てにくい。 借入後に市場金利が急上昇した場合、未払利息が発生する場合がある。 |
固定金利期間終了後に市場金利が上昇すると返済額が増加する。 借入時に固定金利期間終了後の返済額が確定しないので返済計画が立てにくい。 |
フラット35の審査
フラット35の目的はマイホームの購入を促進させることです。
もともと国の予算を使って融資を行ってきた住宅金融公庫の継承機関である住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して提供しています。
住宅金融支援機構は、独立行政法人として公的な存在でもあります。
そのため住宅金融支援機構は民間金融機関の住宅ローンより審査が甘いと言われています。
フラット35の場合、年収の10倍まででローンを組むことができます。
例えば、年収800万円の人がフラット35でローンを組めば、最大8,000万円まで融資を受けることができます。
フラット35を悪用した不正利用について
フラット35は国民の住生活充実のためのローンであり、投資目的には利用できないことになっています。
しかし、2018年9月に「不正に利用されている」という外部からの情報提供があって以降、2019年5月に113件、さらに8月に別途49件の不正利用の疑いが明らかになり、合計で162件も不正の疑いがあることが発覚しました。
明らかになった不正利用の内容は、大きくは本来あってはならない投資目的での利用と、申込み時の住宅価格を不正に水増しして、多額の融資を受けるという2点で、その両方ともに行ったケースが大半を占め、通称「なんちゃって」と呼ばれていました。
これらの不正利用は、融資契約違反であり、犯罪行為に該当します。
発覚すれば一括返済を迫れることが一般的です。
不正利用の原因とは?
フラット35を悪用した不正利用を主導したのは、中古マンションなどの住宅売主と不動産仲介会社です。
投資を勧誘する業者、サブリース業者などを巻き込んで利用者を勧誘していたことが明らかになっています。
利用者は投資用の物件を手に入れられる上に、契約書の改ざんなどによって水増し融資を受けて、さらに現金まで手にすることができるメリットがありました。
しかし、これらの不正利用は、フラット35の制度の穴を突いた非常に悪質なものです。
不動産投資用ローンは、マイホームのための住宅ローンに比べて金利が高いです。
不動産投資用ローンは2〜4%が中心ですが、フラット35は1%前後で利用することができます。
ターゲットになったのは、収入が少ない若い世代を中心に、「投資用の物件を手に入れられる上に、現金まで貰える」と言葉巧み迫り、さらには不動産投資の収益が向上し、賃料収入でローン返済のほとんどをカバーでき、持ち出しはゼロで済むなどと勧誘していたとされています。
これらの不正利用は、契約時に業者と利用者が口裏を合わせて購入目的を偽ることで多額の融資を受けていました。
不正利用に関わった住宅売主と不動産仲介会社はどうなるのか?
フラット35の不正利用に関わった住宅売主や仲介会社などには行政処分の可能性が考えられます。
住宅金融支援機構は、不正利用を誘導した住宅売主や仲介会社などに対して罰する権限を持っていません。
しかし、すでに国土交通省などの行政に通告しており、今後、国土交通省や自治体から行政処分などの措置が行われることが予想されます。
フラット35の不正利用者はどうなるのか?
フラット35の不正利用者に対しては、原則的に一括返済を求めています。
2016年度から2017年度の借り入れが大半なので、残高はほとんど減っていないことでしょう。
仮に2000万円の借入額であれば、1800万円~1900万円程度の現金が必要になります。
不正利用者の多くが20代後半〜30代の若い世代であることを考えると、大金をすぐに用意できる人は少ないことが予想されます。
信用力があれば、別の金融機関で借り入れを行って、借り換えることもできますが、これも不正利用者の属性を考えると現実的ではありません。
住宅金融支援機構によると、一括返済できない場合は、長期の延滞が発生した場合と同様に、競売にかけて代金を返済してもらう方針です。
しかし、競売の場合、市場の相場より安く落札されることがほとんどです。
不足分に関しては、何年かけても返済していかなければならない義務があります。
当初の借入額が水増しされている金額が大きければ大きいほど、不正利用者にとっては苦しい結果になりました。
さらにフラット35の不正利用によって、信用情報機関のブラックリストに掲載されることも濃厚です。
信用情報機関では、借金やローンの返済状況、クレジットカードの支払い状況などのほか、過去のローン事故などについても情報を収集しています。
住宅ローンを行う金融機関では、審査に当たって信用情報機関からの情報を必ずチェックします。
その時、不正利用の履歴が残っていると、本当に必要になったときに利用できなくなってしまうことは残念です。
利用者からすれば、業者に勧められるままに軽い気持ちで利用したに過ぎませんが、悪意はなかったという言い訳は通用しません。
フラット35の今後について
住宅金融支援機構では、すでに不正利用を防ぐための再発防止策が打ち出されています。
<利用者への注意喚起の徹底>
- フラット35は投資用物件の取得には利用できないことを、機構ホームページ、各種パンフレット、新聞広告などで徹底
- 取扱金融機関の借入時の面談などで、利用者に投資用物件の取得には利用できないことを説明した上で、説明を受けた旨の署名・捺印した書面の提出を求める
<融資審査の強化>
- 取扱金融機関に対して、不正防止のために、不正利用事案の特徴などを記載した注意喚起文書を通知
- 取扱金融機関向けの説明会などを開催、不適正利用の実態、未然防止のための審査ポイントを共有、審査強化の働きかけを実施
- 不適正利用が疑われる案件の融資審査の強化
融資審査の強化に関して、住宅金融支援機構は具体的な対策を発表しています。
過去の不正利用の特徴と照らし合わせて、融資住宅に居住していない可能性がある事案に関しては、住民票の確認、直接の問い合わせなどの確認が強化されます。
また、マイホームを購入できるほどの年収ではないのに、住宅ローンを組んだ方も問い合わせの対象になります。
不正をしていなければ全く問題ないので、仮に問い合わせがあってもビクビクする必要はありません。
フラット35の注意点
フラット35は、マイホームの購入を促進させるための住宅ローンです。
そのため投資目的は勿論ですが、賃貸目的の利用も禁止されています。
しかし、フラット35によって購入した住宅を一時的に賃貸住宅にできる例外もあります。
それはマイホーム購入後に転勤になり一時的に居住できなくなったときは、一定期間後に融資を受けた住宅に戻ることを前提に賃貸での運用が可能です。
いずれ戻ってくることが前提ですが、それでも転勤を伴う職種の人のとっては朗報です。
ちなみにですが、結婚を機に配偶者の家に住むことになったので、フラット35で購入した家を賃貸に出したいという内容は、認められない可能性があります。
取扱金融機関で住所変更などの手続きの際に、今後は融資対象の住宅に住まないことになるので、住宅ローン減税は受けることはできません。
フラット35の不正利用が発覚したことで、一時的に賃貸に出すことについても、運用が厳格化されました。
まとめ
フラット35は、マイホーム購入を促進させるために、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供している最長35年の全期間固定金利住宅ローンです。
国民の住生活充実のためのローンであり、マイホーム購入以外に利用することは絶対にあったはいけません。
もし不正に融資を受けて、それが発覚した場合、一括返済を求められ、大きな負債を背負う可能性があります。
また、信用情報機関のブラックリストに載ることで、本当に融資が必要な時に金融機関から相手にされなくなります。
フラット35はマイホームを購入するために便利な制度ですが、利用される方は正しい使い方を心がけてください。