不動産投資を成功させるためには、不動産をできるだけ安く購入することができることがキーポイントになります。
不動産を安く購入する方法として「任意売却物件」の購入に関心を持っている人も多いのではないでしょうか。
任意売却物件は、不動産を市場価格よりも安く購入できるメリットがあります。
しかし、任意売却物件には、独特の注意点があるため扱いが難しい不動産でもあります。
ただ安さだけを魅力に飛びついて任意売却物件を購入しても収益を上げるどころか、むしろ損してしまうケースもあります。
そこで今回は、任意売却物件を購入するにあたり、知っておくべきリスクやトラブル、注意点などについて解説します。
任意売却物件とは?
任意売却物件とは、具体的にどのような不動産のことを指すのでしょうか。
任意売却とは、自宅や投資マンションなどをローンで購入したものの、物件所有者がローンの返済を滞らせたことで抵当権が実行され、競売にかける前に債権者と債務者の合意に基づいて第三者に売却することです。
さらに簡単な言葉で説明すると、ローンを返済できなくなった人が、不動産を売却してローンを返済するために行う売却です。
このような背景から任意売却は、売主のためではなく、債権者のために行う売却とも言えます。
債権者のために行う売却である以上、債権者の都合が優先され、任意売却は競売よりも短期間で多くの売却額が見込める場合に行われます。
競売では、債権者である金融機関が融資時に設定した抵当権に基づき担保不動産を差し押さえて競売にかけて債権を回収するのですが、競売を実行するためには債権を回収するまで多くの法的手続きを踏む必要があり、手間と時間がかかるだけではなく、競売物件は債権者や債務者の意向が全く反映されない落札価格で決められるため、ほとんどの場合、市場価格よりも安く落札されます。
競売では、債権者が全額回収することが難しく、債務者にとっても残りの債務を返済し続けないといけません。
このように相互にとってデメリットがあるのであれば、債権者と債務者の合意に基づいて任意売却されることがあります。
競売 | 任意売却 | |
売主の意志 | 強制的に競売にかけられる | 売主の意志で売却することができる |
プライバシー | 周囲に知られる可能性がある | 周囲に知られずに売却することができる |
売却価格 | 市場価格の6〜7割程度 | 市場価格に近い価格で取引される |
残債の返済 | 一括 | 分割返済も可能 |
退去 | 強制的 | 場合によっては住み続けることも可能(退去時も協議の上で、決定する) |
期間 | 法的手続きがあり長期間 | 買主が見つかれば短期間で売却できる |
このように任意売却は債権者に債務者の両者にとってメリットが大きいのですが、任意売却は競売とは異なり強制力がないため、あらゆることが債権者と債務者との話し合いによって決定します。
そのためすべての内容において話し合いがスムーズに進むわけではありません。
任意売却物件は、基本的にはトラブルを抱えた不動産であります。
例えば、売主は債務者であるのでお金がないことも普通の不動産売買とは違って特殊なポイントです。
このような特殊性から任意売却物件を購入することは、リスクやトラブルが多く発生することも事実です。
任意売却物件の注意点
売主が夜逃げするリスクがある
任意売却物件を購入することが決まっていても、売主が売却の直前になって夜逃げした場合、購入できない可能性があります。
売主は債務者でありますので、任意売却によって債務を完済することができればいいのですが、売却後も債務が残ってしまう場合は、引き続き返済義務があります。
債務者からすれば、債務を完済できるような売却額で売買できればいいのですが、ほとんどの場合、希望するような売却はできません。
また、売却が決定すれば、売却後に残る債務も決定することを意味します。
債務者は残債を確認して、支払うことができないとわかれば、夜逃げする可能性が高まります。
任意売却物件を購入する場合は、売主の夜逃げリスクを回避するために、売買契約時に手付金を渡すことはNGです。
通常の不動産売買であれば、売買契約時に手付金を支払い、引渡時に残金を支払うことが一般的ですが、任意売却物件を購入するときは、売主に手付金を持ち逃げされる可能性があるので、引渡時に一括で支払うことが大事です。
手付金を要求してきた場合、その条件に応じることは絶対にしてはいけません。
白紙解除の可能性がある
任意売却物件を購入する場合、債権者の都合により直前になって売買できないことがあります。
例えば、債権者が複数いる場合には、物件が売却されたのちに、債権者同士でどのように配分するのか事前に協議されるのですが、その協議が破談に終われば、債権者は抵当権を外すことを了承しません。
任意売却とは、上述したように、債権者のために行う売却である以上、債権者の都合が優先され、債権者は最後まで協議ができるように、売買契約書の中に白紙解除できるように特約が入っています。
万が一債権者の同意が得られず、引渡の日までに物件に設定された抵当権を抹消できなかった場合、白紙解除できるようになっています。
任意売却は、競売のように強制力がないため、債権者に対する返済の配分も決められていません。
そのため、売却して得られたお金をどのように配分するかは、すべて債務者と債権者で話し合って決まります。
債権者が1社の場合は、白紙解除になることはほとんどありませんが、債権者が複数いると、配分の協議で折り合いがつかないケースが多々あります。
任意売却物件には、白紙解除の可能性があることを理解しなければなりません。
瑕疵担保責任が免責されている
任意売却物件の場合、瑕疵担保責任がすべて免責されていることも注意が必要です。
瑕疵担保責任とは、購入した時点では明らかになっていない、隠れた瑕疵((瑕疵(かし)とは、見えない欠陥や不具合のことです。))があった場合、売主が買主に対して負う契約解除や損害賠償などの責任のことです。
具体的には、雨漏りやシロアリなどが瑕疵に該当します。
一般的な不動産売買では、売主は3ヶ月の瑕疵担保責任を負いますが、任意売却物件の場合、瑕疵担保責任がすべて免責されます。
瑕疵があった場合でも、売主にはお金がないので、買主が損害を請求しても何もできません。
購入を検討されている場合、任意売却物件には、このようなリスクがあることも理解しておきましょう。
現況有姿売却が原則である
任意売却物件は、瑕疵担保責任がすべて免責されていることと似ているのですが、任意売却物件の場合、現況有姿売却が原則です。
現況有姿売却とは、現在あるがままの状態で不動産を売買することです。
売主は瑕疵担保責任を免れるために、売買契約中に「現況有姿で引き渡す」旨を記載して取引することで、引渡しまでに物件の状況に変化があったとしても、売主は引渡し時の状況のままで引き渡す債務を負担しているにすぎないという趣旨で用いられています。
つまり現況有姿を買主が認めれば、売主は物件に大がかりな修繕を行う必要がなくなります。
そして、引渡し後に見つかった瑕疵についても責任を負わなくて済みます。
現況有姿売却ことは、買主にとってはデメリットなので注意が必要です。
公簿売買が原則である
任意売却物件の場合、公簿売買が原則になります。
不動産の売買契約における売買価格の決定は、一般的に登記簿の表示面積で金額を一時的に定めて契約したのちに、実測面積による金額との差額を精算する実測売買と呼ばれる方法が多いです。
実測売買に対して、公簿売買は、登記簿の表示面積を用いて売買価額を確定します。
公簿売買は測量が不要で簡便な方法でありますが、実測面積が小さいと判明したときには揉め事になりやすいです。
しかし、任意売却物件で実測売買を許してしまうと、契約時点の売買価格と引渡し時点で金額が異なることになります。
それではそこまで合意した債務の返済額の配分調整が水の泡になってしまいます。
任意売却では、一度決めたことは基本的には変更しないことが原則です。
公簿売買であることは、実測面積が小さいと判明した場合、買主にとってデメリットですが、任意売却物件の場合は仕方がないことです。
この点も購入を検討している場合は理解しておくべきです。
任意売却物件を探す方法
任意売却物件を探すためには、一般的に任意売却物件を扱う専門サイトを使います。
任意物件情報センターや全日本任意売却支援協会は任意売却物件を多く掲載しておりオススメです。
このようなサイトを利用することで、任意売却物件を得意する不動産会社や専門家と出会うことができますが、すでに何度も説明している通り、任意売却物件の購入にはリスクが伴うことを認識しましょう。
任期売却物件の購入で住宅ローンは利用できるのか
任意売却物件の購入でも住宅ローンを利用することは可能です。
しかし、任意売却の場合、一般的な不動産売買とは違い、手続きや制限が多くなるので、ローンの審査などは余裕を持って進めることが大事です。
【まとめ】任意売却物件の購入は十分に注意することが大切
ここまで任意売却物件を購入するメリットと失敗しないための5つの注意点について解説します。
任意売却とは、債権者のための売却であるため買主にとってリスクや制限が多いことは確かです。
しかし、任意売却物件は安いが故に不動産投資として魅力的であることも事実です。
購入を検討する場合は、十分にリスクを排除した上で購入するようにしましょう。