不動産投資は、株式やFX・商品先物取引と比較すると、価格の変動が少なく安定していることからミドルリスク・ミドルリターン型の投資と呼ばれています。
サラリーマンの間でも不動産投資を副業として始める人が多くなっています。
しかし、投資には必ずリスクが伴います。
不動産投資が安定した投資で、リスクが少ないことは事実ですが、不動産の知識がないのに、おいそれと気軽に始めると取り返しのつかない失敗をしてしまいます。
そこで今回は、不動産投資の専門家である筆者が不動産投資のメリット・デメリットを紹介しながら、サラリーマンが不動産投資で失敗しないために10のポイントを解説します。
不動産投資とは?
不動産投資とは、利益を得ることを目的として不動産に投資することです。
具体的には、アパートやマンションなどを購入して家賃収入を得たり、購入した物件の価値が上がったときに売却し、その差額で売却益を得ることです。
株式やFX・商品先物取引などの金融商品と比較すると、低リスクで長期的に安定した収入を得られ、節税効果も期待できることから、近年はサラリーマンとして働きながら不動産投資を始める方が増えています。
不動産投資で利益を得る方法とは?
上述のように不動産投資で利益を得るためには、2つの方法があります。
インカムゲイン方式
インカムゲイン方式とは、不動産を第三者に賃貸物件として貸して、家賃収入で利益を得る方式です。
キャピタルゲイン方式
キャピタルゲイン方式とは、購入した物件の価値が上がったときに売却して、売却し利益を得る方式です。
サラリーマンが不動産投資に取り組むメリットとは?
サラリーマンが不動産投資をするメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
手間がかからないので副業に向いている
不動産投資を始めるのは大変と思っている方が多いのではないでしょうか。
しかし、不動産投資をスタートすることは意外と簡単なことです。
不動産投資を始めるために、サポートしてくれる不動産会社があります。
不動産会社は、金融機関の融資、不動産の選定、集客、物件や家賃の管理など、不動産投資に纏わるほぼすべてをサポートしてくれます。
不動産投資において、日常的に何かに追われるということはほとんどありません。
もちろん不動産の情報収集は大切ですが、不動産を購入後は、基本的に何もしなくてもいいということが不動産投資の大きなメリットです。
他の投資や副業では、ここまで自由になることはありません。
例えば、株式やFX・商品先物取引は、目まぐるしく変化する値動きを常にチェックしないといけないです。
不動産投資は、最初に投資する意思さえあれば、誰にでもできる投資です。
節税効果が期待できる
サラリーマンが不動産投資を行うと、特に初年度は大きな節税をすることができます。
不動産投資を行うと、家賃収入が発生しますが、それと同時に多くの経費も発生します。
経費が家賃収入を上回ると赤字になってしまいますが、その際に給与所得から赤字分を引いて所得金額とすることが可能です。
結果的に税金が減るので節税効果があります。
下記は、年収500万円のサラリーマンが副業で不動産投資をスタートして、計算上50万円の赤字となった場合のシミュレーションです。
不動産投資をしていない場合 | ||
給与所得 | ① | 5,000,000 |
所得税 | ② | 528,736 |
住民税 | ③ | 250,500 |
不動産投資をした場合 | ||
不動産所得 | ④ | -500,000 |
合計所得 | ⑤ | 4,500,000 |
所得税 | ⑥ | 333,500 |
住民税 | ⑦ | 235,000 |
節税金額 | ||
所得税(②−⑦) | ⑧ | 195,236 |
住民税(③−⑧) | ⑨ | 15,500 |
合計 | ⑩ | 210,736 |
給与所得だけの場合、所得税は528,736円、住民税は250,500です。
しかし、不動産投資した場合、損益通算によって、所得税と住民税を合計して210,736円も節税することができます。
生命保険の代わりになる
サラリーマンが不動産投資する場合、多くの方が金融機関から借り入れを行います。
金融機関から融資を受ける際には、団体信用生命保険(団信)への加入が義務付けられていることがほとんどです。
団体信用生命保険とは、融資を受けた本人が死亡または高度障害になった場合に、残債が保険会社によって支払われるものです。
残債がな無くなるため、遺族の方には無借金の不動産が手元に残ることになります。
引き続き、毎月安定した家賃収入も得ることができます。
生命保険に入り、遺族に多額の保険金が入るのと似たような構図です。
生命保険文化センターが実施した「生命保険に関する全国実態調査」(二人以上の世帯調査)によると1世帯あたりの年間払込保険料(個人年金保険の保険料を含む)は平均38.2万円です。
自分で稼いだお金の中から生命保険の料金を何十年も支払うと、不動産投資によって入居者の賃料収入で保険料を支払うことを比較すると、不動産投資の魅力を感じて頂けるのではないかと思います。
サラリーマンが不動産投資で失敗しないための10のアドバイス
サラリーマンの不動産投資には、節税効果や生命保険の代わりになるなど大きなメリットがあることをご理解頂けたと思います。
そこで次は、サラリーマンが不動産投資で失敗しないために不動産投資の専門家である筆者が10のアドバイスを特別に伝授したいと思います。
本気でオーナーになる覚悟が必要
不動産投資で利益を得るためには、上述のようにキャピタルゲイン方式とインカムゲイン方式の2つの方法があります。
サラリーマンの不動産投資の場合、基本的には、不動産を第三者に賃貸物件として貸して、家賃収入で利益を得る方法がほとんどです。
そのため、20-30年と長期に渡って物件のオーナーになる覚悟が必要です。
どうしたら多くの人が自分の物件を借りたいと思ってくれるのか、コストを抑えるためにはどうすればいいのかなど、物件のオーナーとして経営者意識を持つことが大切です。
サラリーマン卒業は基本的に難しい
不動産投資が上手くいったら、会社を辞めて悠々自適に暮らしたいと思っている方も多いはずです。
不動産投資で不労所得をと考えているなら、不動産投資はそれほど甘いものではありません。
例えば、区分マンションを1戸、2戸所有する規模では、マンション購入にローンを利用した場合、家賃収入はローンの返済に消えます。
ローンの返済金額を支払った上で家賃収入が残ったとしても、会社を辞めることができほどお金が残らないことがほとんどです。
年収600万円以上の人が住むような都心のマンションをいきなり所有することは難しいので、一戸ずつ投資物件を増やしていくスタイルが基本です。
不動産投資は成功すればそれなりの収益が見込めますが、サラリーマン所得を上回るためには、それなりの時間と努力が必要です。
長期的なキャッシュフローを把握して、不動産投資の知識と付けながら、余裕を持って進めることが大切です。
騙されないために最低限の知識を身に付ける
不動産投資に限らず、投資をする場合は、その分野の最低限の知識を身に付ける必要があります。
悪徳業者に騙されないために知識が必要であることは勿論ですが、不動産投資は、金融機関や不動産会社、建築会社、仲介会社、管理会社、リフォーム会社、税理士、司法書士、弁護士など多くのプロと話し合いながら進めていくため、最低限の知識がないと相手に言いなりになり、自分が想像していたような投資ができません。
自分の時間を惜しまず、不動産に関わる知識、法律などを身に付けることを心がけてください。
セカンドオピニオンを求める
不動産投資では、多額のお金が動きます。
怪しい業者に「騙される」可能性がないとは言い切れません。
不審に思うことがあれば、すぐにセカンドオピニオンを求めることが重要です。
少しでも心配事があれば、お金を払ってでも、不動産投資に詳しい専門家、弁護士、税理士に相談すべきです。
不動産会社の言うことばかり信じすぎると、事態が泥沼化する危険性もあります。
置かれている状況を冷静に判断することができる第三者の客観的な意見はとても大切です。
時には損切りする勇気が必要
不動産投資に限らず、投資には失敗が付き物です。
支払ったお金を惜しんでズルズルと引きづるよりも、失敗しそうな気配を感じたら、すぐに撤退することが長期的に見た場合、損失を抑えられることがほとんどです。
特に高額な物件になれば、失う金額も大きくなる可能性が高まります。
小さいな失敗の段階で、時には損切りすることが大切です
空室・家賃滞納のリスクがある
不動産投資で利益を上げるためには、まずは借主を見つけることです。
借主が見つからない、見つかっても家賃が支払われないなどは、不動産投資をする上で大きなダメージです。
このようなリスクがあることを事前に理解する必要があります。
空室には、不動産管理会社を通すサブリース契約((サブリース契約とは、サブリース業者がアパート等の賃貸住宅をオーナーから一括して借り上げることです。
一定の賃料収入が見込めることや、管理の手間がかからないことなど、オーナーにとってのメリットがある一方で、近年、賃料減額をめぐるトラブルなどが発生しています。))などの対処法がありますが、サブリース契約自体がトラブルに発展するケースが増えています。
空室・家賃滞納は想像以上に大変な問題です。
例えば、会社をクビになった、給料が下がったなどを理由に家賃を払えなくケースは実に多いです。
空室・家賃滞納の期間もローン返済が止まるわけではないのでリスクを前もって理解する必要があります。
地価下落・家賃下落のリスクがある
不動産投資であれば、地価下落・家賃下落のリスクがあることは理解しなければなりません。
地価が下がるというのは、対象エリアの人気が下がることです。
家賃収入を得たい場合は、家賃を値下げすることも考えないといけません。
しかし、リフォームなどをして、地価が下がっても不動産自体の人気を保つことは可能です。
しかし、やはり限界があることも事実です。
地価も家賃も絶対に下がらないエリアや物件など存在しませんので、下がりにくいエリアや物件を冷静になって判断する必要があります。
実質利回りを把握する
不動産投資をする上で、投資としての尺度を図る数値の一つに「利回り」があります。
一般的にサラリーマンでも始めやすい築年数の浅いワンルームマンション場合、表面利回りで5~6%ほど、実質利回りでは3~4%ほどになることが多いです。
表面利回りは、別名グロス利回りとも呼ばれておりますが、物件の購入価格に対して、どの程度の年間収支を得られるかの指標として用いられます。
計算の仕方が簡単であるため、不動産会社が作成するチラシや広告、ウェブサイトによく掲載されておりますが、物件を維持するための管理費や固定資産税が含まれていない、あくまで表面的な数値となりますので、注意が必要です。
- 表面利回り(グロス利回り)=年間賃料÷物件の購入価格×100
一方、管理費や固定資産税、火災保険料、地震保険料などの不動産を維持するために必要なランニングコストを考慮した指標を実質利回り、別名ネット利回りと呼びます。
物件によっては、総戸数が少ないがために管理費が高くなったり、築年数が古いため修繕積立金が高く設定されていたりするケースがあります。
表面利回りよりも実質利回りを注視する必要があり、物件購入の際は、実質利回りが何パーセントになるかを計算の上、購入することをオススメします。
- 実質利回り(ネット利回り)=(年間賃料-年間ランニングコスト)÷物件の購入価格×100
例えば、物件価格が3,000万円、月額賃料が15万円(年間180万円)、管理費や固定資産税などの年間ランニングコストが50万円の場合の表面利回りは180万円(年間賃料)÷3,000万円×100=6%になりますが、実質利回りは(180万円(年間賃料)-50万円(年間ランニングコスト))÷3,000万円×100=4.33%となり、1.7%近くも利回り差が生じることとなります。
収支のシミュレーションを何度もする
実質利回りを把握することと似ていますが、不動産は一つとして同じ物件が存在しません。
収入も支出も、実際にいくらになるかはケースバイケースです。
収支のシミュレーションは何度も繰り返して、失敗がないように進めることが大切です。
与信を高める努力をする
不動産投資の場合、ローンは基本的に家賃収入から返済することが一般的です。
そのため購入対象となる不動産の収益性がとても重要です。
しかし、収益性のある物件であれば誰でも融資を受けられるかというと、実はそうではありません。
購入予定の物件の収益性に加えて、購入希望者の与信が極めて重要です。
与信とは、借入れをきちんと返済できるかどうかの信用を与えることです。
個人の信用力によって、融資金額の限度額や融資の可否が決定します。
サラリーマンではあれば、会社名、年収、過去の支払い履歴(滞納履歴の有無など)が見られることが多いです。
【まとめ】不動産投資は早めに始めよう
不動産投資は、基本的にインカムゲインを得るための長期的な投資になることが多いです。
利益を出すためには時間がかかり、ローンを返済するのも時間が必要です。
だからこそ不動産投資は、早く始めた方がローンも早く返し終わり、その分だけ利益を得られる期間も長くなります。
また、投資を長く経験できることは、2件目の不動産投資にも早く着手できるメリットもあります。
不安も尽きないと思いますが、なるべく早く決断することがオススメです。