「老後の資金には2,000万円必要」だというニュースが報じられ、にわかに動揺が広がっています。
2019年6月、金融庁のワーキンググループがまとめた報告書によると、老後生活には年金以外に2,000万円の金融資産が必要となるというもので、いわゆる「老後2,000万円問題」としてテレビや雑誌、新聞などさまざまなメディアで大きく取り上げられたので、印象に残っている読者も多いことでしょう。
しかし、老後を迎える退職までの期間に十分な資産を用意できている世帯は少ないことが現実です。
そこで注目を集めているのが、自宅(持ち家)や所有している不動産を担保にしてセカンドライフに必要なお金を借りられる「リバースモーゲージ」と呼ばれるシニア向けの融資制度です。
毎月のお支払いは基本的に利息のみ、リバースモーゲージの契約者が亡くなった後に預金、自宅売却などを通じて元本を一括で返済するのが特徴です。
今回は、不動産投資の専門家である筆者がリバースモーゲージの特徴とメリット・デメリット、注意点について解説します。
リバースモーゲージとは?
リバースモーゲージとは自宅(持ち家)を担保にしてお金を借りられるシニア層向けの融資制度です。
自宅を担保にすることで、そこに住み続けながら金融機関から融資を受けることができます。
返済方法としては、リバースモーゲージの契約者が亡くなった後に預金、自宅売却などを通じて返済が行われます。
1980年代に一部の自治体が始めた融資制度が日本における最初のリバースモーゲージと言われていますが、最近では「老後の住まいの有効活用」の観点から再度大きく注目されています。
住宅ローンとの違いは?
リバースは「逆に、反対に」という意味があります。
「モーゲージローン」は不動産を担保にした借り入れのことを指します。
一般的に住宅ローンは最初に借りて、借り入れた額を毎月返済しますが、リバースモーゲージは毎月借りて、最後(死後)にまとめて返済します。
つまり、定年退職後も住宅ローンの支払いが残っている場合、住宅ローンからリバースモーゲージに借換えすることで、日々の返済金額を減額させることが可能です。
リバースモーゲージはとても重要な制度ですが、やや複雑であるため、メリットとデメリットをしっかり理解する必要があります。
リバースモーゲージのメリット
リバースモーゲージのメリットには、次のようなものがあります。
自宅を売却することなく融資を受けることができる
リバースモーゲージは、「充実したセカンドライフを送るためにお金が必要というニーズ」と「しかし、自宅は売却したくないというニーズ」を共に満たしてくれることが最大のメリットです。
老後の暮らしを支えるために年金だけでは心細いという方は、リバースモーゲージを利用することをオススメします。
生活費以外にも利用することができる
リバースモーゲージで受けた融資は、自由型と限定型があり金融機関によって異なりますが、自由型であれば、生活費に限らず、まとまって必要な資金にも充てることができます。
住宅ローンの返済資金、老人ホームの入居費、自宅のリーフォーム費、旅費など、自由に使用することができます。
資金の使途に制限がない点は大きなメリットです。
利用時の収入条件などが厳しくない
リバースモーゲージを利用できる年齢(一般的に55歳あるいは60歳以上が多い)は金融機関によって異なりますが、利用時の収入条件などは、住宅ローンなどと比べると、さほど厳しくありません。
また、本人生存中は、毎月の利息を支払えば、本人生存中は返済義務がないこともメリットです。
リバースモーゲージのデメリット
リバースモーゲージのデメリットには、次のようなものがあります。
利用できる住宅に制限がある
リバースモーゲージを利用する際に対象となる住宅は基本的に一戸建てです。
マンションの場合は、対象外のエリアが多いです。
金融機関によっては、エリアによりマンションでも利用可能な場合がありますが、土地付きの一戸建ての方が審査に通りやすいです。
推定相続人の同意が必要
リバースモーゲージを利用にあたり推定相続人全員(子供など)の同意が必要です。
相続人が拒否する場合は、利用できないことがあるので注意が必要です。
また、契約者が亡くなった後、自宅がなくなるので、配偶者や子供がいる場合、住む場所を別途確保を迫られます。
ただし、相続人が現金で返済できれば、自宅を売却する必要はありません。
金利上昇、地価下落のリスク
リバースモーゲージを利用する上で、金融上昇、地価下落、長生きの3つは大きなリスクです。
リバースモーゲージは変動金利型、一定期間の固定金利型のものが多いため、借入期間中に金利が上昇すると、当初よりも受け取れる金額が少なくなります。
地価下落のリスクとは、自宅がある土地の価格が下落してしまうと、融資の限度額の見直しが入ります。
追加で担保が必要になるだけではなく、最悪な場合は、融資が途中でストップして、返済を迫られる可能性もあります。
寿命を考える必要がある
リバースモーゲージを利用する場合、長生きでもダメ、早死にでもダメです。
長生きの場合、途中で融資の限度額に達してしまい、それ以上借りられないことがあります。
逆に早くに契約者が亡くなると、自宅を売却して一括返済する仕組みになっているので損することがあります。
リバースモーゲージの注意点
リバースモーゲージは、契約者が亡くなった後に、自宅を売却して融資の利息と元金と手数料を返済する仕組みです。
そのため、利用するには、ある程度地価の高いエリアに限定されてしまうことが現実です。
上述したように、リバースモーゲージを利用することができる対象建物は、土地付きの一戸建てが基本です。
金融機関によっては、マンションも受け入れてくれる場合もありますが、エリアが限定されます。