長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造及び設備に講じられた優良な住宅のことです。
従来の「つくっては壊す」スクラップ&ビルド型の社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」ストック活用型の社会への転換を目的として、長期にわたり住み続けられるための措置が講じられた優良な住宅(=長期優良住宅)を普及させるため、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が平成20年12月5日に成立し、平成21年6月4日に施行されました。
長期優良住宅の認定を受ければ、税金やローン金利の優遇など、多くのメリットが受けられます。
そこで今回は、長期優良住宅のメリットについて、認定基準や固定資産税、補助金も含めて解説します。
長期優良住宅とは?
長期優良住宅とは、2009年(平成21年)に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」による基準をクリアして認定を受けた住宅のことです。
長期にわたり良好な状態で住み続けることができる措置がその構造及び設備に講じられ、建物の着工前に都道府県知事等に申請を行い、一定の基準に適合していれば、長期優良住宅の認定を受けることができます。
完成後の建物検査はなく、書類審査のみで認定されます。
長期優良住宅の認定実績
下記は長期優良住宅(新築)の認定を受けた住宅の件数です。
一戸建ての住宅 | マンションなどの共同住宅 | 総戸数 | |
2016年 | 10万8085戸 | 1288戸 | 10万9373戸 |
2017年 | 10万5489戸 | 1531戸 | 10万7020戸 |
2018年 | 10万8000戸 | 586戸 | 10万9386戸 |
累計 | 100万4125戸 | 2万837戸 | 102万4989戸 |
国が定めた基準を満たした良質な住宅であるため買主は大きな安心感があります。
毎年10万以上の住宅が長期優良住宅の認定を受けていることから人気の高さを伺うこともできます。
しかし、長期優良住宅の認定を受けるためにはコストがかかるデメリットもあります。
長期優良住宅のメリット
下記は長期優良住宅のメリットです。
- 住宅ローン控除の拡充
- 投資型減税
- 不動産取得税の減税
- 登録免許税の税率引き下げ
- 固定資産税の減税
- 住宅ローンの金利の優遇
- 地震保険料の割引補助金
- 売却時の付加価値
- 長期優良住宅に関する補助金
それでは順番に詳細を確認していきましょう。
住宅ローン控除の拡充
長期優良住宅は、「住宅借入金等特別控除」と呼ばれる住宅ローン減税、住宅ローン控除を受けることができます。
住宅借入金等特別控除は、10年間にわたって、年末の住宅ローン残高の1%が所得税・住民税から戻ってきます。
また、消費税率10%が適用される住宅を取得し、2020年12月31日までに入居した場合には、控除期間が3年間延長されます。
さらに長期優良住宅は、控除対象になる借入限度額が優遇されており、普通であれば4000万円のところ、長期優良住宅なら5000万円まで増額されます。
控除対象になる借入限度額 | |
一般住宅 | 4000万円 |
長期優良住宅 | 5000万円 |
投資型減税
投資型減税とは、現金で住宅を購入した人のための制度のことです。
住宅ローン減税は10年間の控除が続きますが、投資型減税は一度のみの減税制度です。
投資型減税は、長期優良住宅や低炭素住宅などの認定住宅をを取得した場合、性能強化費用として支出した額の約10%分が所得税から控除されます。
控除対象限度額は650万円なので、最大控除額は65万円です。
なお、住宅ローン控除との併用はできませんので注意しましょう。
不動産取得税の減税
不動産取得税とは、土地や建物を買ったときにかかる税金のことです。
一般住宅の場合、控除額が1200万円ですが、長期優良住宅は1300万円に引き上げられています。
控除額 | |
一般住宅 | 1200万円 |
長期優良住宅 | 1300万円 |
長期優良住宅を取得したことによって利用することができる不動産取得税の減税は、「(固定資産税評価額) – 1300万円 × 3%」になります。
適用期限は2020年3月31日までとなっていますが、今後さらに2年間の延長が予定されています。
登録免許税の税率引き下げ
登録免許税とは、不動産の所有権を登記する場合や、抵当権を登記する場合に、登記所で納付する国税のことです。
長期優良住宅を取得した場合、一般住宅に比べて税率が低くなります。
下記は登録免許税の税率の詳細です。
税率 | |
一般住宅 | 保存登記0.15% 移転登記0.3%(一戸建て) |
長期優良住宅 | 保存登記0.1% 移転登記0.2%(一戸建て) |
適用期限は2020年3月31日までとなっていますが、今後さらに2年間の延長が予定されています。
固定資産税の減税
固定資産税とは、毎年1月1日時点で住宅やマンション、土地といった不動産を所有する人全員に発生する税金のことで、不動産を所有している限り支払い続けなければいけません。
新築住宅を取得する場合、一定期間内は固定資産税が1/2に軽減されます。
下記は、具体的に減額される期間の詳細です。
新築住宅の減額期間 | |
一般住宅 | 一戸建て:3年間 マンションなど:5年間 |
長期優良住宅 | 一戸建て:5年間 マンションなど:7年間 |
適用期限は2020年3月31日までとなっていますが、今後さらに2年間の延長が予定されています。
固定資産税の減額を受けるためには、長期優良住宅認定通知書を市区町村に提出する必要があります。
また、住宅面積が50㎡以上280㎡以下、居住部分の床面積が全体の1/2以上の基準があります。
住宅ローンの金利の優遇
長期優良住宅は、住宅ローン「フラット35」の金利優遇制度があります。
フラット35とは、マイホームの購入を促進させるために、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供している最長35年の全期間固定金利住宅ローンのことです。
フラット35を利用するために必要な基準に加えて、更に省エネルギー性・耐震性・バリアフリー性・耐久性・可変性などの面で一定の技術基準を満たすと、「フラット35S」を利用することがでいます。
長期優良住宅の場合、フラット35Sの金利A・Bプランのうち、金利の優遇が高いAプランが適用されます。
Aプランでは、金利の引き下げ期間が10年間になります。
また、長期優良住宅は、返済期間が最長50年の「フラット50」も利用することができます。
地震保険料の割引補助金
長期優良住宅の場合、地震保険料の割引補助金を受けることができます。
割引補助を受けるためには、耐震等級2級以上と定められています。
耐震等級2級で30%割引、耐震等級3級で50%割引が適用されます。
地震保険はどの保険会社で申し込んでも、政府が定めた一定の制約により保険料・補償内容は同じです。
また、割引補助を受けるためには、地震保険のみ加入だけではなく、火災保険にも加入していることが条件です。
売却時の付加価値
長期優良住宅は、高い性能の住宅であることを示した国の認定制度です。
そのため長期優良住宅は売却時の大きな付加価値になります。
売却時に長期優良住宅であることが証明できるように認定書類はしっかりと保管しておきましょう。
長期優良住宅に関する補助金
長期優良住宅を購入する場合、「地域型住宅グリーン化事業(長寿命型)」による補助金を受けられる可能性があります。
長期優良住宅や低炭素住宅など、省エネルギー性能や耐久性能等に優れた木造住宅を、主に新築する場合などに対して補助金が交付されます。
助金額は一戸当たり最大110万円で、地域材を利用することによる加算金などもあります。
なお、補助金を受けるためには、国土交通省の採択を受けた中小工務店で木造住宅を建築する必要がります。
大手ハウスメーカーは対象にならないので注意してください。
長期優良住宅のデメリット
下記は長期優良住宅のデメリットです。
- 申請コストがかかる
- 建築費の上昇、建築期間の長期化がある
- 定期点検が必要
それでは順番に詳細を確認していきましょう。
申請コストがかかる
長期優良住宅の認定を受けるには、申請のための費用がかかります。
また、自分で申請する場合、審査書類、図面などの書類を揃える手間もかかります。
費用はおおよそ5万円〜6万円です。
ハウスメーカーや工務店などに申請を代行してもらう場合は、20万円~30万円程度かかるのが一般的です。
建築費の上昇、建築期間の長期化がある
大手のハウスメーカー、工務店の場合、標準仕様で長期優良住宅の認定規準をクリアしていることが多いので、そこまでは建築費に関して気にする必要がありませんが、中小工務店では、一般住宅よりも20%〜30%ほど割高になることがあります。
また、後期に関しても一般住宅よりも数週間から数ヶ月ほど長期化することがあります。
もし、中小工務店に依頼する場合には、事前に長期優良住宅の実績について聞いた上で、建築費や建築期間についてしっかり確認することが重要です。
定期点検が必要
長期優良住宅の認定を受けた場合、その後も継続的な点検やメンテナンスを行って、住宅を良好な状態に保つ必要があります。
建築前に提出する「維持保全計画」に沿って定期点検を行います。
点検の結果、修繕を必要とする場合には実施することになっています。
また、長期優良住宅について点検や修繕を行ったら、その情報を保管する義務があります。
もし、点検などの活動を怠った場合、長期優良住宅の認定が取り消されることもあるので注意しましょう。
長期優良住宅の認定基準
長期優良住宅の認定を受けるためには、国土交通省が定めた基準を満たす必要があります。
下記は、長期優良住宅の認定基準です。
認定基準項目 | 考え方 | 認定基準の内容 | |
住宅性能表示における評価方法基準の引用部分 | 長期優良住宅独自の部分 | ||
劣化対策 | 数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること。 | 劣化対策等級3(新築住宅) | 構造の種類に応じた以下の措置
【木造】床下・小屋裏に点検口を設置、床下空間の有効高さ330mmを確保 【鉄骨造】さらなる防錆措置または木造と同様の措置 【RC造】水セメント比を5%低減まはかぶり厚さを1cm増加 |
耐久性 | 極めて稀に発生する地震に対し、継続利用のための改修の容易化を図るため、損傷のレベルの低減を図ること。 | 次の①~③のいずれかを満たすこと。 ①耐震等級(倒壊等防止) 等級1(新築住宅) ②耐震等級(倒壊等防止) 等級2(新築住宅) ③免震建築物であること |
限界耐力計算を行い、安全限界変形1/100(木造1/40)以下を確認 |
可変性【共同住宅・長屋のみ】 | 居住者のライフスタイルの変化等に応じて間取りの変更が可能な措置が講じられていること。 | 更新対策(住戸専用部) | 躯体天井高2650mm以上 |
維持管理・更新の容易性 | 構造躯体に比べて耐用年数が短い内装・設備について、維持管理(清掃・点検・補修・更新)を容易に行うために必要な措置が講じられていること。 | 次の①~③のいずれかを満たすこと。 ①維持管理対策等級(専用配管)等級3(新築住宅) ②維持管理対策等級(共用配管)等級3(新築住宅) ③更新対策等級(共用排水管)等級3(新築住宅) |
維持管理の円滑な実施のための必要な措置(管理者の立ち入りを認める居住者の協力義務を管理規約で定めること等)が講じられている場合は、共用配管・共用排水管を専用部分に立ち入らないで補修できる位置に露出させること又は専用部分に立ち入らないで補修できる開口をもつパイプスペース内に設置することを求めない |
高齢者等対策【共同住宅等のみ】 | 将来のバリアフリー改修に対応できるよう共用廊下等に必要なスペースが確保されていること。 | 高齢者等配慮対策等級(共用部分)等級3以上(新築住宅) | 手すり、段差、高低差に関する基準は適用しない |
省エネルギー 対策 | 必要な断熱性能等の省エネルギー性能が確保されていること。 | 断熱等性能等級4(新築住宅) |
長期優良住宅の認定基準を一つずつ確認することは大変ですが、長期優良住宅の実績があるハウスメーカーや工務店に依頼すれば滞りなく進めることができるはずです。
長期優良住宅の認定を受けるための手続き
長期優良住宅の認定を受けるためには、着工前までに申請を行う必要があります。
所管行政庁(都道府県または市区町村)にて申請を行います。
申請時に技術審査や認定手数料などの費用として5万円〜6万円ほどかかります。
ハウスメーカーや工務店に申請を代行してもらうこともできます。
しかし、手数料として20万円~30万円程度の上乗せがあります。
基本的な手続きの流れは、「長期優良住宅建築等計画」を作成し、登録住宅性能評価機関へ事前審査(技術的審査)を依頼します。
審査を通過して「適合証」の交付を受けたら、所管行政庁へ認定申請を行い、その後、認定通知書を受理することができます。
まとめ
ここまで長期優良住宅のメリットについて、認定基準や固定資産税、補助金も含めて解説しました。
長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造及び設備に講じられた優良な住宅のことです。
住宅ローン控除、不動産取得税等の各種の減税制度と、金利優遇や地震保険料の割引、売却時の付加価値など多くのメリットがあります。
しかし、申請コストや建築費が高くなるデメリットもあります。
長期優良住宅は継続的な点検も必要ですが、メンテナンスをしっかり行うことで長期的に安心して暮らすことができます。
ハウスメーカーや工務店の中には、長期優良住宅を得意とする会社もあるので、事前にしっかり調べましょう。